2006.10.28-29
明治38年「枯草」発表の野口雨情の詩『悲劇』に作曲、文化庁芸術加公演「日本の心、雨情のこころ~すがはらやすのりが歌い、特別出演 山本富士子が語る」で発表(於:古賀政男音楽博物館・けやきホール)。
「眼聴耳視(がんちょうじし)の世界」 山本 丈晴
この度、酒井政利さんから野口雨情未発表作品「悲劇」への作曲依頼を受け、この詩を拝見した時、思わず心ときめき、胸が震えるような感動を覚えました。言葉ひとつひとつの奥に込められた雨情の熱い想いがひしひしと胸に迫ります。禅語に、真実を見るには眼で聴いて耳で視るという意味の「眼聴耳視(がんちょうじし)」という言葉がありますが、これぞまさしく雨情の世界そのものだと感じました。多くの名作を世に送り出した雨情の詩の世界にすっかり魅せられ、心を込めて作曲させて頂きました。雨情の心に少しでも近づくことができていれば、大変嬉しく思います。すがはらやすのりさんの見事な歌唱を聞かせて頂くのが楽しみです。また、このような素晴らしい出会いを作って下さった酒井さんに、深く感謝致します。
~公演プログラムより抜粋~
悲 劇
作詞 野口雨情
作曲 山本丈晴
歌 すがはら やすのり
ゆうべは燃ゆる 恋草の
あしたは消ゆる 花の露
夜は美しき 墨染の
紅絹(もみ)の裳裾(もすそ)の 身ぞつらき
君よゆかしき 紫の
ゆかりに結べ 袖と袖
蝶よ花よと 父母の
ひざにすがるは 恥ずかしき
恋の悲劇は 玉の緒の
総ての罪の 終りなり
罪の終りは うたかたの
日高の川の 涙なり
逢いはせぬかよ この川すそで
一夜泊りは 桜の花よ
花のやうなる 旅の僧
※1905(明治38)年、「枯草」に発表